遍路

黛まどか『奇跡の四国遍路』(中公新書ラクレ)を読了。四国に旅行した時、善通寺で白装束に杖をついたお遍路さんを、初めて見た。自分で歩かねば遍路の意味合いはわからないと思うものの、黛まどかの俳句と文章で貴重な仮想体験をさせていただきました。

 

涼しさの鈴の音こぼす遍路かな

 

黛まどかの句。

百日草

百日草はありふれた花、キク科の一年草。咲いている期間が長いので、見かけることが多い。切られて仏壇やお墓に供花として使われる。艶やかに短期間咲くものもあれば、百日草の如く息長く咲くものも必要。世界は多様性の上に成立している。

 

これよりの百日草の花一つ

 

松本たかしの句。

 

百日紅

百日紅さるすべり)は夏の花、近所の家にも必ず植えてあり、開花時期が長いので随分楽しめる。白もあるが、ピンク色が大勢を占める。

 

さるすべり美しかりし与謝郡

 

森澄雄の句。さるすべりが美しいと断定してそれだけの句だが、繰り返される「Ri」音が耳に心地よく、愛唱されるのもわからぬでもない。

夏痩

夏痩(なつやせ)とは、夏の暑さで食欲がなくなり、体重が減少することをいう。

この暑さだから、さぞかしダイエットできたかと思えば、体力維持とばかりに食べているので痩せるにはほど遠い。水分は補給しただけ、汗となってしまう。ハンカチはいつもフル回転。この季語「夏痩せて」とは使わないので、注意が必要。

 

夏痩や窓をあければ野のひかり

 

大木あまりの句。

草田男忌

8月5日は、中村草田男の忌日。「人間探求派」という言葉も、いまや俳句史の項目となってしまった。草田男の句はインパクトがあるので好き嫌いにかかわらず記憶に残る。最近の俳句は印象に残らないのはなぜだろう。俳号を「草田男」と名付け、「腐った男」と言われようが「そう出ん男」の自負心に自らを奮い立たせて俳句に生きた男の生涯がある。

 

炎天こそすなはち永遠の草田男忌

 

鍵和田秞子の句。

虚子

ジュンク堂に行き、『虚子は戦後俳句をどう読んだか』(筑紫磐井編著、深夜叢書社)を購入。虚子フリークなので、高浜虚子関連の本は見つけると思わず買ってしまう。これは「玉藻」の研究座談会の記事から虚子の発言だけを編集したもの。虚子の姿勢の一貫していることに、感心してしまう。虚子は俳句が心底好きだったのだと思う。

 

俳諧の大緑蔭やおのづから

 

虚子の句。