五月と鯉のぼり
【自解・萩原6】
「山々が第九を歌う五月かな」
初めて他人に評価をもらった句。新緑の山々が、ベートーベンの第九を合唱していると見立てた。第九は日本では大晦日のイメージが強いが、別名「歓喜の歌」だから、この季節こそ相応しいと思うのだが、どうだろう?
「鯉のぼりベランダのシャツ翻る」
鯉のぼりが泳ぐ様子を、ベランダに干されたYシャツが風に翻る風景に託して描こうとしたもの。
「廃線の隧道抜けて五月晴」
JR中央線の古虎渓で現在は使われていない廃トンネルが公開され、何本もトンネルを歩いて見学した。
「草刈りの刃の上を揚羽蝶」
初夏は草刈りの季節。庭に農地に、草がすごい勢いで生えてくる。草刈機の回転する刃の上を揚羽蝶が、ひらりと優雅に身をかわし飛んで行った。
「シャクナゲと高校生の娘あり」
「次女朝子、十七歳」の前書きあり。我が家の庭にシャクナゲが植えてあり、毎年赤く大きな花を咲かせる。取り合わせで一句作ろうと試行錯誤して、当時高校二年生の娘に落ち着いた。