父帰る

【自解・萩原13】

「迎火や齡変わらぬ父帰る

お盆は迎火を焚き御魂を迎え入れる。帰って来る父の年齢は止まったままである。

「撥ねられてそのまま空へ墓洗う」

父は夜間に国道を横断しようとして、トラックに轢かれて死んだ。かなりの距離をはね飛ばされ、打撲して腫れ上がった顔は父の顔ではなかった。語らぬ父に、やりきれない悲しさがこみあげた。

「夕顔や出向告げる挨拶状」

出向の挨拶状が届く、年齢の近い先輩や同期から。これも順番か。

「唐辛子皺も赤みも増しにけり」

これはもうそのまま。干された唐辛子が皺クチャになり、濃い赤色になっていく様子。

「台風や雨が屋根打つ乱拍子」

台風が通過していく。屋根の雨音は、風が強いのでリズミカルではない。叩きつけるように雨がふる。強く激しく、風の咆哮が混じって。