砂時計

【自解・萩原19】

「秋の朝あけて街灯暗かりし」

朝が白々と明けると、それまで夜道を照らしていた街灯のあかりが暗いものに感じる。太陽の光のおおいなること、その恵みのありがたさ。

「天高し御霊が一つまた一つ」

秋から冬へ、季節の変わり目には訃報も多くなる。あの人も亡くなったのかと感無量。天へ魂が昇っていくのを、見送るのみ。

「ゆく秋をとどめて倒す砂時計」

秋を惜しんで、砂時計を倒して時よ止まれと念じてみる。かなわぬ戯れ。砂時計の砂は落ちるのを止めないのである。

「長き旅最終章へ群鶇」

冬には大陸からツグミが群をなして渡ってくる。昔はカスミ網を掛けて採っていた。貴重なタンパク源だったのである。山に小屋がけしての小鳥猟は青畝やたかし等の有名俳人が俳句にしている。

「実を割りてあけび全てを曝すなり」

あけびが熟れて縦に割れ、中の白い実が見える。あけびの実は甘いが、種がやたらに多い。子供の頃は果物がわりに、採って食べたものである。