森光子と「時間ですよ」

【自解・萩原24】


「薄枯る穂わた次々飛びゆけり」

薄が枯れて白い穂わたが、風に吹かれ飛んでゆく。新たな地をめざす旅の始まり。

「首ふりて駅を闊歩す鳩の冬」

冬の名古屋駅プラットフォームを鳩が餌を求めて歩きまわる。首を前後に振り勢いをつけて前へ進んで行くのである。

「悴みし手をさしだせり落葉焚」

「たき火だ、たき火だ、落葉焚き」は唱歌の一節。寒さに悴んだ手を火に当てて暖をとる。

「霜月や無職の文字の重たさよ」

弟が無職となり職を探して苦労していた時の句。無職の大変さを推察し、文字が重たいと表現した。

「日を閉じて時間ですよと冬の月」

「女優森光子逝く」の前書き。森光子といえば、TVドラマ『時間ですよ』を思い出す。明るくて、芯が強くて、いい女優だった。