葱ゆだる

【自解・萩原26】

「街師走黒着る人の多かりし」

師走、十二月。街を行く人の服装は、コートも背広も圧倒的に黒色が多くなる。暖かさを求めると、黒になるのだろうか。

「冬晴やビルの鋭き角切る景色」

冬の晴天日は、景色がくっきりと見える。ビル鋭角のラインが、風景を鮮明に切り取る。

「とどまらんとすれども雫冬柳」

柳の枝に雫が垂れている。とどまろうと思っても、重力は無情に雫を地に落とす。

「気がつけば夜ではないか葱を切る」

「鍋の中あとに残りし葱ゆだる」

雑誌『俳句』の兼題が「葱」で作った2句。葱イコール料理の連想で、切るシーンと鍋物の句になった。