もぬけの殻

【自解・萩原56】

「天蓋を割りて雷落ちにけり」

落雷の大音量。天の蓋を叩き割って地に落ちてきたか。

「紫陽花の色深み行く山の道」

アジサイの色が山道を進むにつれて、より濃く深い色合いに変化していく。

「蝉の声夜明けを待たず空に充つ」

夜明け前から蝉は鳴き、空白の時間を作らない。彼等は命懸けで鳴いているのだから。

「蝉出でてもぬけの殻となりにけり」

「もぬけの殻」という言葉を使ってみたかった。存在の空虚。

「夏旺ん息切れ前の蛍光灯」

夏の電車、切れかかった蛍光灯が点滅している。