久保田万太郎 食の句

久保田万太郎は、食べ物の俳句を沢山作った人でもある。戸板康二の選んだ句は、

「もち古りし夫婦の箸や冷奴」

「ごまよごし時雨るる箸になじみけり」

「まぎれなき雪の絲ひく納豆かな」

「煮大根を煮かへす孤独地獄かな」

「人情のほろびしおでん煮えにけり」

「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」

私の好きな俳句は、

「パンにバタたつぷりつけて春惜しむ」

「ばか、はしら、かき、はまぐりや春の雪」

「たけのこ煮、そらまめうでて、さてそこで」

「みかん剥く指に寒さの残りけり」

「冷麦の三箸がほどの涼しさよ」

「鮟鱇もわが身の業も煮ゆるかな」