【『萩原』以後(13)】
「緑蔭の深きに座して女人像」
奥嵯峨の尼寺『祇王寺』は、竹林と楓と苔に囲まれ、本当に緑の中にある。草庵にはひっそりと、祇王、祇女達の小さな女人像が祀られていた。
「落柿舎の柿まだ落ちず一休み」
『落柿舎』は、向井去来の別宅で芭蕉が逗留して『嵯峨日記』を執筆した。俳句好きなら誰でも一度は訪ねてみたい場所である。柿の木があり、たわわに実をつけていた。土産に柿の置物を買ってきた。
「柿一つ去来の墓に置かれたる」
落柿舎の北側を少し行くと去来の墓がある。虚子が「凡そ天下に去来程の小さき墓に参りけり」と詠んだように、小さな墓がある。誰が置いたのか、柿が一つ供えてあった。