徒然(上)

第60回角川俳句賞に投稿。昨年に続き2回目となる。タイトルは『徒然』とした。2回に分けて発表します。


ユーカリの幹白々と秋澄めり
秋冷をただよう雲の飛行船
今はもう誰も採らざる棗の実
葡萄棚パイプオルガンの音聞こゆ
ぼうぼうと唐黍立ちてすがれけり
ビル灯りモザイクにつく神無月
暮の秋何を勝負のじゃんけんぽん
明るすぎるビルの間に冬の月
息白し学習塾の車待ち
薄紅をひきて冬日の沈みゆく
木曽川の土手を枯草続きけり
朝以前寒を引き連れ電車席
抽斗に冬の日を入れてしまった
寒空が静止している潦
通帳の印字確かめ冬賞与
白鳥と鴉会談お堀端
寒椿酒屋一軒閉店す
霜柱あとかたもなく崩れけり
黒コートエスカレーター乗り停まる
毛糸玉こんがらがったままそのまま
年の暮吊り輪を握る手に力
寒昴次々人の替わりたる
空きビルの落書き消えず越年す
太陽光パネル冬日は地に未達
雪が降るどこへも行かず家にいる