虚子探訪 (3) 恋は曲者

【虚子探訪 (3) 】

 

「もとよりも恋は曲者の懸想文」

 

明治29年。懸想文はラブレターのこと。中8の破調でリズムもよろしくない。収録したのは、「恋は曲者(くせもの)」の言い回しが気に入っていたのか、自分の恋愛の思い出なのか。

 

「怒濤岩を噛む我を神かと朧の夜」

 

明治29年。上8の字余りの破調の句。中7「我を神かと」とは自負心の強さとはいえ、恐ろしいまでの主観の提示である。普通自分を神に見立てることはしないし、他人に言わないだろう。正岡子規が「明治二十九年の俳句界」で取り上げた作品であり、その記録のために収録したのだろうか。虚子22歳。