虚子探訪(17) 稲塚

 

【虚子探訪(17)】

 

「稲塚にしばしもたれて旅悲し」

 

明治32年9月25日。虚子庵例会。私は「稲塚」を見たことがないので、稲塚がどんなものかイメージできない。稲塚へもたれて少しの間休息している旅人、旅を進めるその人の様子は悲しげであるという句意と思われる。「旅悲し」という直接的な表現も、状況不明で何が悲しいのか、漠然とした旅愁なのか、正直よくわからない。旅をしているのは虚子なんだろうか。

 

「春の夜や机の上の肱(ひじ)まくら」

 

明治33年。春の夜、机に向かって原稿書きでもしているのであろうか。なかなか進まず、いつのまにか肱を枕にして寝入ってしまった。