虚子探訪(31) 法師蝉

【 虚子探訪(31)】

 

「発心(ほっしん)の髻(もとどり)を吹く野分かな」

「発心」は仏を信じる心になること、出家することをいう。「髻」は頭髪を集めて束ねたところ。何か世を儚む事情があり出家するのだが、まもなく剃髪して切り取られる髻に野分の強い風が吹いている。本来、発心と野分は無関係であるが淡々とした叙述に、発心した人の語られぬ人生に思いが広がる。

 

「秋風にふえてはへるや法師蝉」

 

明治37年8月27日。芝田町海水浴場例会。会者、鳴雪、牛歩、碧童、井泉水、癖三酔、つゝじ等。「法師蝉」はツクツクボウシのこと。秋に入り法師蝉の鳴く声が増えるが、やがて鳴き声も少なくなって 、季節が秋に変わったことを知る。