虚子探訪(37) 恋かるた

【 虚子探訪(37)】

 

「座を挙げて恋ほのめくや歌かるた」

 

明治39年1月6日。一座の空気にほのかに恋心が漂う歌かるたの会であるとの句意。未婚の男女が集まり遊ぶかるた会には、当然恋愛感情はつきもの。

 

「垣間見る好色者に草芳しき」

 

喜寿艶』自解には「昔男を偲ばせるやうな好色者が、女の家の垣の外に立つてその隙間から中を覗いて居る。足許には匂やかな春草が生えて居る。」とある。

 

「草芳(ほうそう)や黒き烏も濃紫(こむらさき)」

 

明治39年3月19日。「草芳し」も「芳草」も「春の草」の傍題であり、萌え出た草の瑞々しい様子を表す季語。草が萌え出る春となり、黒いカラスも濃い紫色に見えることだ。紫色は昔から懐かしい色とされている。