虚子探訪(46) 賢夫人

【 虚子探訪(46)】

 

「秋扇や淋しき顔の賢夫人」

 

明治39年。秋とはいえ残暑の残る日に扇を使っているのは、淋し気な顔をした理性的で賢そうな夫人である。秋扇には、やがて捨てられる、すでに古くなったという感じがあり、淋しき顔とシンクロしていくのである。

 

「君と我うそにほればや秋の暮」

 

秋の夕暮れに、花柳界の女性と座敷で静かに酌み交わす馴染みの二人。女の言葉は嘘だろうが、騙されて惚れたふりをしようか。微妙な心理の駆け引き。

 

「淋しさに小女郎なかすや秋の暮」

 

明治39年9月17日。遊郭の秋の夕暮れの一風景。淋しさをまぎらすために、若い女郎を泣かせているよ。泣かせているのは男か、女か。それによって話しの展開は異なる。二句とも物語性を指向した虚構を感じる。

 

 

 

 携帯句会は、8日に結果発表のメール発信。選句には、五藤氏も参加となり10名と盛況。 4月は、近氏の出題で〈天・地・人〉です。よろしく。