虚子探訪(62) 木の芽

【虚子探訪(62)】

 

「大寺を包みてわめく木の芽かな」

 

大きな寺を包み込むかのように、周囲を取り囲んで樹木が植生している。春になり一斉に木々が芽吹きの時をむかえたのである。その賑わしいような状態を「わめく」と表現したのである。生命の躍動感、風の音、木々の枝のざわめきが聞こえるようである。

 

「菊根分剣気つつみて背丸し」

 

大正2年2月26日。半美庵偶会。戸塚。「菊根分」は春の季語。菊の古い株から萌え出した新芽を、細根とともに取り分ける作業。菊根分をしている人は、刃物を使っている気配を包み込んで消すかのように、背中を丸めて作業をしているよとの句意。