虚子探訪(80) 木曾川

【虚子探訪(80)】

 

「露の幹静に蝉の歩き居り」

 

大正5年9月10日。子規忌句会。露に濡れた木の幹を蝉が静に歩いている様子を写生。虚子は、こういうもの静かな風景が好きなのだろう。

 

「大空に又わき出でし小鳥かな」

 

空に湧き出るように子鳥たちが飛び立ったのであろう。子鳥狩は美濃東部地域では、貴重なたんぱく源確保の手段であり、カスミ網をかけて盛んに猟が行われた。

 

木曾川の今こそ光れ渡り鳥」

 

大正5年11月6日。恵那中津川に小鳥狩を見る。四時庵にて。島村久、富岡俊次郎、田中小太郎、清堂、零余子、はじめ、泊雲、楽堂同行。木曾川を鳥が飛んでいく。「今こそ光れ」のフレーズに高揚した気分が伝わってくる。「渡り鳥」と小鳥に限らず対象を広げて句柄が大きくなった。