虚子探訪(81) 闇汁

【虚子探訪(81)】

 

「破蕉龍を失して水仙玉をはらめり」

 

大正5年12月3日。帝大俳句会。9日、夏目漱石逝く。芭蕉の葉は破れて立派な外観は亡くなってしまったが、水仙は宝玉を懐妊したかのごとく美しく咲いている。龍も玉も天子に関する物事につけて敬意を表する言葉。俳句というよりは、漢文の一節みたいなものになっている。

 

「闇汁の杓子を逃げしものや何」

 

大正5年12月28日。高商俳句会闇汁会。芙蓉居。闇汁は、鍋の中に入れた具がわからないまま食べる。杓子からこぼれおちた具は、さてさて何だったのだろう。