虚子探訪(85) 蛇

【虚子探訪(85)】

 

「蛇逃げて我を見し眼の草に残る」

 

大正6年5月13日。発行所例会。16日、坂本四方太、中川四明、日を同じうして逝く。

蛇と遭遇してお互いを見た。蛇は逃げ去ったが、私を見つめていた蛇の眼が、蛇のいた草の上に残像として残された。印象鮮やかな作品。

 

「葭戸はめぬ絶えずこぼれ居る水の音」

 

大正6年。某料亭にて。水のこぼれる音が間断なく続くので葭戸をはめたことだ。水の流れる音は風流であるが、気になりだすといけない。