虚子探訪(86) 高嶺晴

【虚子探訪(86)】

 

「簗見廻つて口笛吹くや高嶺晴」

 

大正6年6月10日。発行所例会。口笛を吹きながら簗を見廻っている人がいる。高い山の上の空は快晴、上機嫌である。

 

「此松の下に佇めば露の我」

 

大正6年10月15日。帰省中風早柳原西の下に遊ぶ。風早西の下は、余が1歳より8歳迄郷居せし地なり。家空しく大川の堤の大師堂のみ存す。其堂の傍に老松あり。

虚子が幼児期を過ごした土地を訪れた。かつて住んだ家はなく、風景はかわってしまった。残っている大師堂の松の下で感慨にふける虚子がいる。