虚子探訪(95) 野菊

【虚子探訪(95)】

 

秋天の下に野菊の花弁欠く」

 

大正7年10月21日。神戸毎日俳句会。果てしなく澄み切った秋の空を歩いてきて、ふと足許をみれば数片の花びらが無い野菊が咲いていた。花弁を欠く野菊の硬質な感じと秋空の透明感が一体となっている。

 

「二三子や時雨るる心親しめり」

 

大正7年10月22日。堺俳句会。この日一転庵泊。子供が二三人いるので、時雨でくもりがちなこころも、やさしく親しい気持ちになるよ。虚子は、大変子煩悩だったらしい。