虚子探訪(101) 冬帝

【虚子探訪(101)】

 

「山のかひに砧の月を見出せし」

 

大正8年。「かひ」は「峡」で山と山が迫っている所をいう。砧を打つ夜の仕事を照らし出す月明りを「 砧の月」と表現したもの。山あいに月を発見、砧を打つ音が夜に響く。

 

「冬帝先づ日をなげかけて駒ヶ嶽」

 

大正9年1月。小樽にあるとしを、丹毒のため小樽病院に入院せるを見舞ひ、31日帰路につく。青函連絡船にて。冬の太陽の光が雪の駒ヶ岳に差し始めた。年尾の病気は小康状態となり父虚子の安堵と喜びが句になった。「冬帝」は冬の季語。寒さの厳しい冬を擬人化した。