虚子探訪(121) 競べ馬

【虚子探訪(121)】

 

「雨風に任せて悼(いた)む牡丹かな」

 

大正14年5月17日。大阪にあり。毎日俳句大会。会衆八百。

雨風にさらされて、傷つきそこなわれていく牡丹の花。非情で冷静なまなざしの写生句。

 

「競べ馬一騎遊びてはじまらず」

 

大正14年5月22日。道後に宿泊。松山三番町横丁の某クラブに於て。

「競べ馬」の神事は、京都上加茂神社の行事。この行事が日本の競馬の発祥といわれている。

開始準備ができているが、一頭の馬が落ち着いてくれず競馬が始まらないのである。困惑顔の人たちが見えるようである。