虚子探訪(130) 古書

【虚子探訪(130)】

 

「古書の文字生きて這ふかや灯取虫」

 

古書の開いたページの文字の上に生きた灯取虫が這っているのである。古書に時間の堆積を感じさせて、這いまわる灯取虫の生命の燃焼を詠んだ。

 

「威儀の僧扇で払ふ灯取虫」

 

大正15年7月。作法に添った重々しい態度の身なりの整った僧侶が、扇で灯取虫を追い払う。厳格さと灯取虫のアンバランスに面白みありと感じて詠んだのだろう。