虚子探訪(138) ものの芽

【虚子探訪(138)】

 

「うなり落つ蜂や大地を怒り這ふ」

 

昭和2年3月17日。肋骨、為王、楽堂と雑談句作。発行所。蜂の巣が除去のため地面に落とされたのだろうか。怒れる蜂は唸り声のような羽音をたて地面を這いまわり飛ぶ。近寄ると危ないぞ、刺されないよう御用心。

 

「ものの芽のあらはれ出でし大事かな」

 

昭和2年3月。「ものの芽」は春に萌え出る諸々の芽のこと。「大事」の表現は大仰なとも思えるが、新緑となる生命活動に対する驚きと発見は大事件なのかもしれない。