虚子探訪(142) セル

【虚子探訪(142)】

 

「セルを著て病ありとも見えぬかな」

 

昭和お2年5月。「セル」は、薄い毛織物の生地で作った初夏の着物。最近はあまり着られなくなった。夏の季語。セルを着たその人を見ると、とても病気があるとは見えないとの句意。

 

「鵜飼見の船よそほひや夕かげり」

 

昭和2年6月。大阪毎日、東京日日新聞社募集の日本八景の選抜委員を委嘱され、その候補地を視察する為岐阜に至り、長良川の鵜飼を見る。

日暮れて長良川の河原に係留された鵜飼いの船には、見物客が乗り込み宴会が始まる。鵜飼見物の船はそれぞれに、やがて上流から来る鵜匠の船を待ち、次第に盛り上がって行く。