虚子探訪(152) 行人

【虚子探訪(152)】

 

「両の掌にすくひてこぼす蝌蚪の水」

 

昭和3年4月。七宝会。植物園。両手でオタマジャクシを掬いとったのである。水が滴りこぼれ、オタマジャクシが手の中ではねている。

 

「行人の落花の風を顧(かえりみ)し」

 

昭和3年4月15日。発行所例会。「行人」は道を歩いて行く人、狭義では旅人をさす。散る桜を運ぶ風をふり返り見ているのである。春を惜しむのか、無常の世に嘆息をしているのか。