虚子探訪(163) 丁字

【虚子探訪(163)】

 

「虻落ちてもがけば丁字(ちょうじ)香るなり」

 

昭和4年3月18日。発行所例会。アブが落ちて命の終りともがく姿がある一方、丁字の花は満開で香りがひろがっている。自然界を冷徹に見た句。

 

「後手に人渉(かちわた)る春の水」

 

昭和4年4月1日。立子同伴、京都にあり、泊月、王城、桐一、播水、桂樹楼、波川、ながしと光悦寺に遊ぶ。秋桜子も亦来る。

手を後ろに組んで、春の水が流れる川を人々がゆっくりと景色を楽しみながら渡ってゆく。春の穏やかな一日。