【虚子探訪(209)】
「鶯や御幸の興もゆるめけん」
昭和8年4月12日。中辺路を経て田辺に至る。中辺路懐古。
鶯の鳴く声に、後鳥羽上皇をはじめとする熊野詣の御幸の一行も、しばし興をゆるめて鶯の声に耳を傾けたことだろうという句意。
「子(ね)の日する昔の人のあらまほし」
昭和8年4月19日。大磯一本松、中村吉右衛門別邸に行く。安田靭彦の意匠になるといふ庭に昔絵に見るが如き稚松多し。
これは中村吉右衛門への挨拶句。目前のさっぱりとした庭の小松に、昔の子の日の行事の殿上人今ここにいてくれたらなあという句。