虚子探訪(216) 菊の宿

【虚子探訪(216)】

 

「秋の蝶黄色が白にさめけらし」

 

昭和8年10月23日。玉藻句会。丸ビル集会室。

はかなげな秋の蝶、その白色はもともと黄色だったのが色褪せたのかと思える。「けらし」は原形「ける+らし」であり過去を推定する意味であり、俳句で使われることは珍しい。

 

「顔抱いて犬が寝てをり菊の宿」

 

昭和8年11月3日。家庭俳句会。鎌倉、虚子庵。

伸ばした前足に頭をのせ、気持ちよさそうに寝ている犬。庭先には菊の花が咲きほこる。うららかな秋の一日が眼に浮かぶようである。