虚子探訪(237) 行々子

【虚子探訪(237)】

 

「檝(かじ)の音ゆるく太しや行々子」

 

昭和10年6月24日。玉藻句会。丸ビル集会室。

沼に浮かぶ一艘の舟、檝を漕ぐ音がギイッ、ギイッと力強く大きな音を立て舟はゆっくりと進んでいく。

沼の葦原に巣を作り生息する行々子のギョギョシ、ギョギョシの鳴き声が聞こえる。

 

「吹きつけて痩せたる人や夏羽織」

 

昭和10年6月28日。鎌倉俳句会。鎌倉山

風に吹きつけられて、着ていた夏羽織がピタッと身体に貼り付いたのである。その光景を見て、今まで痩せた人だと思っていたが、実際に痩せていることを実感したのだ。