虚子探訪(239) 寒鴉

【虚子探訪(239)】

 

「かわかわと大きくゆるく寒鴉」

 

昭和10年12月12日。七宝会。松本長氏追善。不忍池畔雨月荘。

「かわかわ」は鴉の鳴き声の擬態語。冬木にとまっていた鴉が2~3度鳴いた。鴉の鳴き声が、寒い冬空に響き渡る。松本長は宝生流の能役者で、松本たかしの父。

 

「大空に羽子の白妙とどまれり」

 

昭和10年12月13日。草樹会。丸ビル集会室。

突かれれた羽子が大嵐へ上り、今まさに落ちようとする瞬間をとらえた。大空はどこまでも青く、羽子は限りなく白い。新年の清々しい静謐感が、句からあふれている。