2016角川俳句賞(上)

第62回角川俳句賞は、松野苑子氏の「遠き船」が受賞。

「帰去来」の題で応募した私の作品を2回に分けて掲載します。

 

葱坊主つぎつぎ風は吹いてくる
花便りライン知らせる第一報
マスクより機関銃の喋りかな
おしぼりの袋よく飛ぶ春北風
撫で摩る鎖骨のまはり鳥曇
落書の壁黒々と春驟雨
北窓を開きて風を呼び込みぬ
シクラメン一つ二つと減る花弁
初燕夫は単身赴任中
就活の黒散らばりて四月かな
コンビニの喫煙者たち春の泥
春時雨ビニール傘の数多し
若緑アキレス腱を伸ばしけり
花水木深呼吸する人がゐる
草青む靴底見せしスニーカー
やうやくに回り出したる風車
菜種梅雨宝くじ買ふ人の列
花薊刺あることは知つてゐる
石楠花や堰切るやうに花開く
廃店のガソリンスタンド草若葉
青空をこぼれ落ちしか天道虫
陽炎や事故車寄せらる道路脇
一声を鳴きて鶯飛び立ちぬ
針立てて匍匐前進毛虫ゆく
土産置くゴールデンウィーク電車席