北大路翼『時の瘡蓋』

北大路翼の句集『時の瘡蓋』(ふらんす堂)を読了。『天使の涎』に続く第2句集である。1ページ10句が延々続く。読んでいて突然思ったのは、これは俳句のラップなのではないか。ラップを聞くように読んでいけば軽快に読み進めることができる。一句一句は、意味ありげである現実が17音に現れ、すぐまた浮遊して消えていく。虚子は「眼中のもの皆俳句」と言ったが、北大路翼もすべては俳句にできるんだぜと言っている様な気がする。新宿の雑踏と混沌が、俳句の衣装を着けている、そんな感想を持った。

 

あれこれとカレーに足して霜の夜

一度しか吊れない首や大晦日

煤逃げの違ふ星まで行くことも

 

北大路翼『時の瘡蓋』より。