福田若之『自生地』

福田若之の初句集『自生地』(東京四季出版)が、ちくさ正文館に2冊並べてあったので購入して読む。本のサイズは新書の横幅が2センチほど拡大した変型版。

試行錯誤がそのまま読者に提示された感じである。こんなこともあんなこともやってみたんだけどどうですか、という問いかけ本。

読んで思ったのは、句の構造が散文「AはBである」というのが大半であるということ。この俳句構造は、強く断定するために俳句の結論に諾否の選択しか残されない。私はこれはマンションに似ているなと思うのであるが、マンションは出入り口が玄関一つ、そこの通過が許されるかどうかがポイント。だから仮に「マンション俳句」と命名してみる。俳句の散文化が指摘されて久しいが、生活スタイルがマンション化し個人生活に他者を入り込ませない傾向に社会が進む中で思考様式も影響を受けているのだろう。

現代が色濃く反映された句集である。

 

春はすぐそこだけどパスワードが違う

 

句集より。