2017角川俳句賞(下)

角川俳句賞への応募作、「遅日」残りの25句。

 

中年の破れジーンズ春夕焼
遅き日や垣根の蔓は絡みあふ
春の雨鳩の姿は消滅す
褪色の求人ポスター四月尽
苜蓿繁る葉の下影生まれ
花虻や脇目もふらず突入す
囀りの休むことなく椎大樹
藤の花房引力の絶え間ざる
新緑や高速バスを先導す
太陽の塔となりたし葱坊主
地下鉄や涼しく誰も迎へ入れ
新緑の深きところに神の宮
緑陰を挙式の夫婦拝殿へ
木下闇鳩の視線が集まりぬ
日没の駅の人波汗臭し
手の甲に血管浮くや花菖蒲
冷蔵庫閉め暗闇に戻しけり
冷し中華気分は少し強めの酢
団扇裏返し無かつたことにする
半ズボン足の静脈透けて見ゆ 
蜘蛛の糸あらぬところをつなぎけり
薄暑光今日また頼むAランチ
法面に力集めて朴若葉
土撥ねて光まぶしき蚯蚓かな
真ん中に皇帝ダリヤ植ゑにけり