『おらおらでひとりいぐも』

芥川賞を受賞した若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社)を読了。作者は1954年生まれなので、4歳年が違うだけ。
久し振りに読んだなという満足感のある小説。繰り出される岩手弁と、錯綜する主人公桃子の思考が、独特のリズムを刻み、小気味良く小説は展開してゆく。青春の門ならぬ老年の門にたたずみ、おそるおそる中を覗いてみたが、まさしく今の時代にしか生まれない小説なのだと思う。50代で伴侶と死別し、四半世紀を一人で生きてきたわが母も、桃子の一人なのだろう。高齢化社会に新たな文学が現れた。慶賀としたい。


鳥帰るいづこの空もさびしからむに

安住敦の句。