夜明け前

夜明け前といっても島崎藤村の小説ではない。余談であるが、近代文学日本文学の名作とされた「夜明け前」も志賀直哉の「暗夜行路」も、現在どれくらいの人が読むのだろうか。

まだ日の昇らないしらじらと夜が明けていく頃、蝉の鳴き声が唸るように鳴り響く。蝉にとっては、生命の最後の燃焼であり絶唱である。この蝉の声を「しづか」と把握した芭蕉は凄い。蝉の声に今日が始まる。

 

閑さや岩にしみ入る蝉の声

 

芭蕉の句。