角川俳句賞2018(上)

『俳句』11月号を購入。第64回角川俳句賞が発表されている。鈴木牛後「牛の朱夏」が受賞。今回の応募は567編。毎年1年の締め括りのつもりで応募している。2回に分けて自分の応募作を公開します。

 

「姫女苑」

 

鈴の音に頭を垂れて初神
寒風や線路の上を保全
光沢を踏みつけ歩く雪の道
グツグツと音たてて出る味噌煮込み
春の水エビアンはコンビニで買ふ
探梅行名札のついた杖をつき
白梅の蕾眺めてまた眺む
啓蟄や歯間ブラシのよく通る
ファミチキの胡椒辛さや春寒し
山笑ふライフプランのセミナーへ
スタンプの返信メール卒業す
玄関に出迎へしたる雛飾
ドトールの席それぞれに春の朝
街中を花咲爺は歩きけり
玄関に風吹き入れし花の塵
しばらくは落花のなかにたたずみぬ
売れ残る木蓮花を咲かせけり
タンポポの三々五々と姿見せ
菫草鐘鳴る方へ傾きぬ
葛の花道を覆ひて続きたる
蘖や昔のことは知らないが
竹の秋無数の時間ふりしきる
春の空マンションの上避雷針
ゴミ袋積み上げられて春の雨
春歌など久しく聴かず蛙鳴く