角川俳句賞2018(下)

 昨日に続き、角川俳句賞応募作「姫女苑」後半です。

 

ノーメイク両手あふれる春の水
揚羽蝶わが後ろから現れる

鳥の巣や親子と呼べる間柄
春耕や土に大気を鋤き入れる
波静か宮の渡しに鴨の列
春キャベツ包丁の音はずみたる
田楽の表も裏もよく焼けて
日脚伸ぶマイナビDODAanの文字
沈丁花含み笑ひをする女 
補聴器の音量MAX亀鳴けり
コンビニは更地となりし鳥雲に
種芋や土ねんごろにかぶせけり  
雨傘の滴を落とし暮の春
山法師人動き出す朝七時
姫女苑朝日のさして風吹いて
夏隣誰にも喋る精算機
頬骨の輪郭あらは夏きざす
夏を病み部屋中母の呼吸音
筆談で進む会話や夏始
旅に行くと母は言ひけり雲の峰
氷水透き通ることに抗へり
焼そばのソースの匂ひ夏の午後
夏帽子渇ききつたる水たまり
緑陰や八幡神社立つところ
聖五月濃尾平野の空すべて