老醜

その老人はシート席で文庫本を読んでいた。よれよれの汚いコートの下は背広姿だったので、サラリーマンなのだろう。年齢は60歳すぎ。老人は、喉に違和感があるのか、絶えずウエッと音をたてている。足を組んでずり下がった靴下と、痩せた生足を見せている。最悪なのは鼻水をすでにかんだティッシュをとりだし、ぬぐっている。老人には他人のことなど関係ないのだろうが、周囲の者は不快感でたまらくなる。老醜という言葉を実感した。


寒風と魚のやうにすれちがふ

大木あまりの句。