句集『稲津』(5)赤蕪

【句集『稲津』(5)】

 

七人を送りて独り母の冬

 

私の母は七人兄弟の長女。一世代前までは子沢山であった。因みに父の方は8人兄妹。子沢山の家庭が多いかったのは、昔は避妊方法が普及していなかったし、子供を育てるコストも低かったからだろうか。兄達は亡くなり妹にも先立たれ、ついに七人兄妹の最後の一人になった。

 

赤蕪寒さもろとも漬け込みし

 

岐阜県飛騨地方は赤い蕪大根を漬けた赤かぶ漬が名産品。雪が降り始め冬の寒さを感じる11月に、保存食として赤蕪を樽に詰めて漬物作りが行われる。収穫時の寒さが赤蕪の色素を濃く美しくさせ、寒暖差により凝縮した甘味をもつ。白い大根と違って赤い蕪は色も鮮やかで食欲をそそる。赤蕪は「あかかぶら」と読んで下さい。