句集『稲津』(12)雪だるま

【句集『稲津』(12)】

 

雪だるま面目なくし溶けにけり

 

 「面目」の意味は、世間での立場、世間からの評価や名誉。立場を保ったり、立場を失ったりする状況で「面目」が使用される。古くから使用される言葉であり、顔、顔の様子を意味する。雪だるまが「面目ない」といって溶けて姿を隠したと考えると楽しいではないか。

 

ポケットに手を突っ込んで余寒かな

 

寒さが身に染みるときは、ポケットに手を入れて暖をとる。「余寒」は立春後の寒さをいい、寒が明けてもなお残る寒さの感覚を表す言葉。高浜虚子に「鎌倉を驚かしたる余寒あり」の句がある。選者小笠原和男で『俳句』佳作入選した。