句集『稲津』(24)水芭蕉

【句集『稲津』(24)】

幸せを一つ買ひ足す扇かな

買い物は人に幸福感を与える。自分の欲望を満たすことができた達成感、所有するという独占欲の充足感なのだろうか。扇子を買うことをうれしく思うのは、買い物の功徳なのだろう。


山彦の返す声なし水芭蕉


山歩きをする。道をゆけどもゆけども人に遭わず、山の木々と空があるばかり。水芭蕉が咲いている。全ては世界を構成して存在する。足を止めずに歩いていく。