虚子探訪(145) くらげ

【虚子探訪(145)】

 

「大夕立来るらし由布のかきくもり」

 

昭和2年7月。大毎、東日委嘱により別府に至る、日本八景の一に当選したる別府の記事を書く為。

大きな夕立がやってきそうだ。由布岳のあたりはにわかにかき曇りもう真っ黒になっている。

 

「わだつみに物の命のくらげかな」

 

昭和2年8月4日。清三郎福岡転任送別東大俳句会。丸の内、竹䈎亭。

「わだつみ」は海のこと。大海原に漂う生命、小さなクラゲ。大なる海から、焦点は小さなクラゲへと絞られ、浮遊する命へと想いは寄せられる。