2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

保津川トロッコ列車

【『萩原』以後(12)】 「トロッコ列車紅葉に早し右左」 10月に京都嵐山に遊びに行き、嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車に初めて乗った。嵯峨野と丹波亀岡間7. 3kmの距離を片道25分、往復して保津川渓谷の景色を楽しんだ。紅葉には、まだ早かったのが残念。 「…

秋の蝿

【『萩原』以後(11)】 「秋の蝿とまるところを探し飛ぶ」 季節はずれの秋の蝿が部屋に入って来て、あてどなくさ迷い飛んでいる。どこへ飛んでいくのだろう。 「群芒おいでおいでと波打てり」 ススキほど人間の近くにある植物はないのでは。群生する道端の…

千日紅

【『萩原』以後(10)】 「千日紅ぽんぽんぽんと顔を出し」 千日紅(センニチコウ)は、ヒユ科の春蒔き1年草。夏から秋に開花する。炎天下にもめげずに茎分かれして、球状の花を咲かせる。花の咲く様子は「ぽんぽんぽんと」の形容詞がぴったりくる。 「西天…

永保寺

【『萩原』以後(9)】JRさわやかウォーキングで多治見市を歩き、その時できた3句。多治見市は、多治見北高校に3年通学し、就職しては2回支店勤務となり、通算6年半いた愛着の深い場所である。 「秋深し永保寺の堂静かなる」 虎渓山にある永保寺は臨済宗南禅…

『俳句』連続佳作入選

角川の『俳句』2014年7月号に 「ポケットに手を突込んで夜寒かな」 の句が佳作入選。選者は小笠原和男。6月号に続き連続の佳作入選は初めてのこと。いつも3句を雑詠に投句しているが、他の2句は「雪解水道に溢れて流れけり」「春来たる厩舎の屋根を朝日跳ね…

キンポウゲ

【『萩原』以後(8)】キンポウゲ(金鳳華)は、ススキとともに風景のなかで最もよく見かける植物。キンポウゲ科の多年草。五弁の光沢のある花を咲かせる。 「溢れ咲く人の手不要キンポウゲ」 「線路脇キンポウゲまたキンポウゲ」

【『萩原』以後(7)】 「遠き子や月にかかりし雲少し」 安住敦の句に「葱坊主子を憂ふればきりもなし」というのがある。子供のことを心配すればきりがない。自分の人生は、自分で進むしかない。親としては、ただ見守るばかりだ。 「台風は行ってしまった虹…

遷宮日

【『萩原』以後(6)】 「柏手を二つ打ちたり遷宮日」 2013年は、伊勢神宮の20年に1度の式年遷宮の年であった。二礼二柏手一拝が神道の拝礼の原則。「遷御」の儀式は内宮10月2日、外宮10月5日に催行された。年初に伊勢神宮に参拝したが、遷宮ということでも…

老躯

【『萩原』以後(5)】愛知県で一人住まいの義母は、2013年2回入院した。最初は転倒による背骨の骨折、2回目は肺炎。75歳を越えた老人が最も注意しなければならない転倒、肺炎だが、みごとに大当りとなった年であった。 「蜩や歳の重みに骨崩れ」「部屋独り…

あっけらかん

【『萩原』以後(4)】 「コスモスやあつけらかんと咲きにけり」 秋の季節、コスモスがあちこちに咲いている。そんなに手がかかる花ではないので、「あつけらかん」という形容詞は、的はずれではないと思うのだが。 「心臓のあぶりうつ音十三夜」 人間ドック…

十三夜

【『萩原』以後(3)】『片山由美子対談集 俳句の生まれる場所』『海と竪琴』(長谷川櫂)読了。どちらも川崎展宏の部分が興味深かった。 「鼻水も蕎麦もすすりし十三夜」 十三夜は、陰暦九月十三日の月。吹く風が肌寒く感じられる頃。夜の駅ホームで立喰い…

矢勝川堤の彼岸花

【『萩原』以後(2)】愛知県半田市の矢勝川堤には約200万本の彼岸花が植えられており、開花時期は壮観と呼ぶに相応しい風景が展開する。JRさわやかウォーキングで初めて堤を歩き圧倒されました。 「彼岸花赤き洪水押し寄せり」「あの世から百万本の彼岸花」…

『萩原』以後(1)

素人の分際で出してしまった初句集『萩原』。次の句集のタイトルは決めてはいるものの、発行時期は未定。 『萩原』以降に書きためた俳句を、ポツポツと紹介していきます。まずは2013年9月以降の分から。 「退職す雲ひとつなき秋の空」 初句集を出したのは退…

中村苑子 自選9句

中村苑子の俳句は、最初とても嫌いだった。他の俳句に比べてあまりに死のイメージの喚起力が強く、観念的に思えたからだ。しかし、夫を戦争で亡くし、自らも死にそうになった体験を持つ作者には、生死とは眼前にある現実であった。生死を往還する独自な世界…

高野ムツオ『句集 萬の翅』

高野ムツオ『句集 萬の翅』(角川学芸出版、2013初版)が、読売文学賞を受賞し、第48回蛇笏賞も受賞した。作者は宮城県在住、東日本大震災で被災。「子熊座」主宰。 早速に読んでみた。印象に残った句を10句紹介する。 「人間に戻りてプールより上がる」「万…

『相生垣瓜人全句集』

かねてより欲しいと念願していた『相生垣瓜人全句集』(角川書店、平成18年初版)をついに入手した。アマゾンに3万円を超す値段で出品されていたがとても手が出ず、古書店でも見かけなかった。今回、日本の古本屋に出品があるのを発見。 名古屋市昭和区の「…

久保田万太郎 食の句

久保田万太郎は、食べ物の俳句を沢山作った人でもある。戸板康二の選んだ句は、「もち古りし夫婦の箸や冷奴」「ごまよごし時雨るる箸になじみけり」「まぎれなき雪の絲ひく納豆かな」「煮大根を煮かへす孤独地獄かな」「人情のほろびしおでん煮えにけり」「…

久保田万太郎「落語観賞」連作

久保田万太郎が、安藤鶴夫「落語観賞」(昭和23年)の序文に贈った俳句連作。 かぞへ日となりたる火事に焼けにけり(富久)四萬六千日の暑さとはなりにけり(船徳)大門といふ番所ありほととぎす(明烏)墓腹の空に鳶舞ふ日永かな(お見立)横町のうなぎやの…

久保田万太郎「婦系図」の俳句

小沢昭一の本を読んだら、久保田万太郎の俳句が久しぶりに読みたくなり、アマゾンで『万太郎俳句評釈』(戸板康二)を購入。この本で、泉鏡花の『婦系図』を俳句にした8句が紹介されている。「短日や八丁堀の露地の中」「冬つばき世をしのぶとにあらねども…

犬の俳句

昨日は猫の俳句を紹介したので、本日は犬の俳句。まずは、虚子大先生の「顔抱いて犬が寝てをり菊の宿」実に気持ちよさそうな犬の寝顔。「土堤を外れ枯野の犬となり行けり」山口誓子のハードボイルドな犬。「犬が足踏まれし声す焚火の輪」ドジな犬です。右城…

猫の俳句

東京の八重洲ブックセンターで石寒太著の『日めくり猫句 』(牧野出版 、2007年初)という本を購入。この本猫の俳句ばかりを1年間紹介したもの。世の中の人は猫好きと犬好きに大別されるらしい。私は戌年でトイプードル飼っているから犬好きか。この企画、出…

小沢昭一週間(7日目)

「かまきりの小首かしげる葉末かな」「小首かしげる」がいいね。「鉄条をくぐる近道赤まんま」鉄条が近道の厳しさを匂わせる。「疲労困ぱいのぱいの字を引く秋の暮」この「ぱい」は「憊」。文字変換で今はあっという間に探せます。「わが庭の実梅大事に大切に…

小沢昭一週間(6日目)

小沢昭一は俳句について「全く俳句は、ナマヤサシイ楽しさではありません。私にとっては、何よりも、もちろん仕事よりも楽しいのです。」と書いている。俳句にぞっこん惚れこんでいるのである。 「寒釣りや同じ顔ぶれ同じ場所」鷹羽狩行が採った句。「昼の湯…

小沢昭一週間(5日目)

1929年東京都蒲田出身。戦災で家は焼失、父は病没し母一人子一人の母子家庭だった。早稲田大学在学中に演劇を志し俳優座養成所に入る。劇団創立し、着々と俳優としての地保を固める。TBSのラジオ番組「小沢昭一の小沢昭一的こころ」など、絶妙な語り口はまさ…

小沢昭一週間(4日目)

東京やなぎ句会は17日が例会日。小沢は欠席せず毎回出席し俳句に入れ込んだ。酒を飲まない小沢にとって、句会は飲み会、ゴルフの替わり。友達と馬鹿話するのも楽しかったろうが、「俳句はほんとうの自分と出会える」とも書いており、自分と語る時間だったの…

小沢昭一週間(3日目)

小沢昭一が四十余年で詠んだ約4000句が収録されているのが句集『俳句で綴る変哲半生記』。岩波書店から2012年刊行された。 変哲追悼エッセイが収録された『友ありてこそ五・七・五』(東京やなぎ句会編)も、同じく岩波書店から2013年に出版。 「春の日にそ…

小沢昭一週間(2日目)

変哲の俳号は、川柳を作った父親の川柳名を引き継いだもの。他人に説明する時は変態の変と哲学の哲で、合わせて変哲と説明していた。親思いのシャイな都会っ子だった。「セーターや所帯の苦労ぬぎて寝る」ホントに脱ぎ捨ててしまいたい!寝るしかないか。「…

小沢昭一週間(1日目)

小沢昭一のことを書いたら、無性に俳句を紹介したくなった。私の好きな変哲(小沢の俳号)の俳句を7日に分けて並べていきます。句意は平明、説明不要。一緒に楽しみましょう。「初雪を恵と口に受けにけり」口を開けて雪を受けたことあるよね。「寒月やさて行…

句あれば楽あり

六月になったと思ったら、いきなりの真夏日。暑すぎて何もやりたくない。地球は壊れ出したのかなあ。小沢昭一の『句あれば楽あり』(朝日新聞社、1997年初)を読み返している。この本、小生の俳句入門のガイドブック。そうか、久保田万太郎の俳句がいいと思…

大学受験と俳句

通帳の残高がいきなり減ったので、何かと調べたら大学の前期授業料が自振で落ちたのであった。次女が今年、筑波大学芸術学群に入学。受験をめぐり俳句も幾つか作った。わが家の記録である。「筑波嶺の風に怯まず冬雲雀」筑波大学推薦入試に臨む娘へのエール…