2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

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【自解・萩原16】「秒針の音が聞える秋寒し」一人で静かな部屋に座っていると、時計の秒針の進む音が聞こえる。寒さが身に沁みる季節へと移ってゆく。「墨で描いたような雲だ冬隣」秋の曇空。水墨画のようなグレーな世界。「光線が空を切り分け秋の朝」朝日…

大名古屋ビルヂング

【自解・萩原15】「秋日さす鉄塔銀に輝けり」句集名にした萩原の地は屏風山麓にある。送電線の鉄塔が山を繋いで並び立つ。秋の日に照らされた鉄塔が銀色に光耀いた。「秋祭一男二女の父なりし」秋祭は秋の収穫を祝うお祭り。我が家の収穫は、一男二女。平成…

車窓の影法師

【自解・萩原14】「新涼や車窓向こうに影法師」夜の列車、座席対面の窓ガラスに映る影法師。もう一人の自分が、こちらを見つめている。沈黙の対話。「青イガの転がって行く昼下り」栗の木から落ちた青い毬が道を転がって行く。未熟なまま、途上のまま、未完…

父帰る

【自解・萩原13】「迎火や齡変わらぬ父帰る」お盆は迎火を焚き御魂を迎え入れる。帰って来る父の年齢は止まったままである。「撥ねられてそのまま空へ墓洗う」父は夜間に国道を横断しようとして、トラックに轢かれて死んだ。かなりの距離をはね飛ばされ、打…

フォルティシモ

【自解・萩原12】「プチトマト斑の赤を山と盛る」ミニトマトよりさらに小さなプチトマト。どんぶりに山盛のプチトマトは、濃淡いろいろな赤があり、まさに斑模様。「フォルティシモ桃はち切れて滴りぬ」『俳句』で「桃」の題が出され、なかなか句が作れなかっ…

夏夜の底へ

【自解・萩原11】 「蜘蛛の巣の真ん中に蜘蛛動かざる」蜘蛛は張り巡らした巣の真ん中に、じっと佇み動かない。世界の中心に位置するのは自分自身。「アスファルト蟻の荒野は続きけり」駅のホームのベンチに座って、下を見るとアスファルトの地面を蟻が走り回…

東京スカイツリー開業

【自解・萩原10】「こめかみを撃ち抜きたるや夏の風邪」これはもうそのまま。夏風邪をひいた時の頭痛を詠んだ。ピストルでこめかみを撃ち抜かれたと比喩したが、勿論そんな経験はない。「東京の夏煌々と塔の夜」「東京スカイツリー開業」の前書き。2012年5月…

夏と花火と水泳と

【自解・萩原9】「黒き空花火の雫しだれ落つ」打ち上げ花火の光景。夜空に拡がった光輪は、しだれ桜のように地に落ちていき、やがて消える。「赤き蛇身をくねらせて急ぎ消ゆ」蛇を見かけることも少なくなった。小さな赤蛇と遭遇した。びっくりしたのは人間だ…

長良川鵜飼

【自解・萩原8】「篝火をゆらしつ下る鵜飼舟」 「夏の闇ほうほうと鵜匠呼ぶ」 「鵜の首が浮きつ沈みつ長良川」 「鵜篝や火の粉川面に吸い込まる」 長良川の鵜飼は、5月11日から10月15日まで。芭蕉の「おもしろうてやがてかなしき鵜舟かな」をはじめ、幾多の…

なんじゃもんじゃ

【自解・萩原7】「内定やなんじゃもんじゃの花白し」「長男耕平就活」の前書き。2012年の就活は学生に大変厳しいものだった。なんとか内定を貰い就職したが、苦労のイメージを「なんじゃもんじゃ」と取り合わせてみた。なんじゃもんじゃはヒトツバタゴの異名…

五月と鯉のぼり

【自解・萩原6】「山々が第九を歌う五月かな」初めて他人に評価をもらった句。新緑の山々が、ベートーベンの第九を合唱していると見立てた。第九は日本では大晦日のイメージが強いが、別名「歓喜の歌」だから、この季節こそ相応しいと思うのだが、どうだろう…

風車、ツバメ、駅へ行く道

【自解・萩原5】「道端に挨拶続くきんぽうげ」外出した時に一番みかけるのが、きんぼうげ。繁殖力が強いのだろう。道路脇にきんぼうげの黄色の花が、ずらりと咲き揺れている様子を挨拶をしているように感じ作句。「風車カラカラ回りやがて雨」駅へ向かう道に…

横蔵寺の木乃伊(ミイラ)

【自解・萩原4】「横蔵のミイラ笑いて桜散る」岐阜県の揖斐川町谷汲の横蔵寺には、江戸時代に絶食して生き仏となった僧侶の木乃伊(ミイラ)が展示してある。桜も散り出した頃に見学した。「美濃の正倉院」と呼ばれる、隣の宝物館の所蔵品も素晴らしい。「調…

桜、桜、桜

【自解・萩原3】「花冷えの川泳ぎ行く鴨が二羽」JR東海の「さわやかウォーキング」で4月に多治見を妻と歩いた。折り返し地点の笠原川を、鴨が二羽上流へと泳いでいった、あれは夫婦だったのだろうか、「蕎麦たぐる箸の先には花の宴」これも「さわやかウォー…

伊吹山と天地融合

【自解・萩原2】「稜線が白く溶け合い冬伊吹」「冬曇天地一つに伊吹山」勤務先は岐阜市なので、通勤電車の窓から伊吹山が眺められる。曇天の日の白い空と、雪の積もる伊吹山、天と地の境界が消えた情景を詠んだ。「待合所マスク溢れて春遠し」冬の病院の待合…

自解『萩原』スタート

2013年に出した第一句集『萩原』から5句ずつ、紹介していきます。全360句、最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたします! 【自解・萩原1】「雪やまず無音の景色ひろがりぬ」句集の一番最初の句。しかし一番最初に作った俳句ではない。雪が静かに降…

渥美清『赤とんぼ』

フーテンの寅さんといえば渥美清。1928年、東京生まれ。学校に弁当を持っていけない程貧しかった小学校時代。肺結核で片肺となった下積みの20代。「男はつらいよ」で国民的俳優となったが、晩年は人知れずガンと闘った。苦労人である。 45歳の時に「話の特集…

坪内稔典「甘納豆のうふふふふ」

坪内稔典の名前を知ったのは、『俳句のユーモア』(岩波現代文庫)を読んでから。その本で出合ったのが、次の句。「三月の甘納豆のうふふふふ」なんだこりゃ?である。今まで読んだことのない俳句である。未知との遭遇。だけど、いいねえこの俳句。斬新で楽し…

塚原アヤ「お父さん」

鷹羽狩行の『ラジオ歳時記 俳句は季語から』(講談社+α新書、2002年)読了。以前に古賀まり子の「お母さん」の句を紹介したが、この本に素敵な「お父さん」の句を見つけた。 「天国はもう秋ですかお父さん」 塚原アヤという子の昭和60年全国小中学生俳句大…

村越化石が逝去

3月8日、村越化石が老衰により91歳で逝去。静岡県藤枝市出身。 16歳でハンセン病にかかり、離郷を余儀なくされる。かつて一部の感染症の病気は、他者への感染を理由に強制的に隔離された。当時「癩病」と呼ばれたハンセン病もそういう病気で、不治の病…

川柳 日本昔ばなし

閑話休題。 余興で作って家族・友人に披露した川柳です。タイトルは「川柳 日本昔ばなし」。 ◇桃太郎拾いあげれば捨てられず◇きび団子たいしてうまいものでなし◇後ろから犬猿雉と続きけり◇鬼ヶ島桃太郎がくる鬼やらひ◇鉞(まさかり)のやたらにでかい金太郎◇…

石田郷子と「背泳ぎ」

女性が続くが今回は、石田郷子である。 1958年、東京生まれ。父は「鶴」同人の石田勝彦。山田みづえに師事。第一句集『秋の顔』が、第20回俳人協会新人賞を授賞。平成16年に「椋」創刊。 同年なので親近感を持っている俳人である。 「背泳ぎの空のだんだんお…

『津川絵理子作品集1』を読む

今、一番気になる作者は津川絵理子である。 ふらんす堂から出ている『津川絵理子作品集Ⅰ』は、俳人協会新人賞授賞の『和音』と星野立子賞と田中裕明賞授賞の『はじまりの樹』が一冊になりお得。画家の祖父をもつ彼女は、年少の頃に毎日写生画を描いていたら…

神野沙希 『光まみれの蜂』

神野沙希、期待される若手の女性俳人である。 彼女の句集『光まみれの蜂』(2012年、角川書店)の冒頭の句は、「起立礼着席青葉風過ぎた」授業開始の「起立礼着席」の言葉と青葉の取り合わせ。学校生活の風景を上手く切り取った。「さみしいといい私を蔦にせ…

後藤夜半「底紅」

『後藤夜半の百句』を読んでいる。 夜半は優れた作家ではあるが、夜半が時の彼方に忘却されなかったのは、息子の後藤比奈夫が語り続けてきたことも大きいのではないか。後藤夜半といえば、必ず出てくるのが「瀧の上に水現れて落ちにけり」箕面の瀧で詠まれた…

宇多喜代子『戦後生まれの俳人たち』

1971年、ジローズ「戦争を知らない子供たち」戦争が終わって僕等は生まれた 戦争を知らずに僕等は育った おとなになって歩き始める 平和の歌をくちずさみながら 僕等の名前を覚えてほしい 戦争を知らない子供たちさ作詞は北山修、作曲が杉田二郎。30万枚を超…

古賀まり子「お母さん」

小川軽舟の俳句は、死ぬときはこうありたいという願望の句だが、古賀まり子の臨終の母をみとった俳句も忘れられない。「今生の汗が消えゆくお母さん」心拍が止まり、生命活動が停止した母の身体から汗が消えて、冷却が進んでいく。それを静かに見詰めている…

小川軽舟「死ぬときは」

小川軽舟、現役で活躍する男性俳人の中堅。 「鷹」主宰。1961年生。句集『呼鈴』より「鳥公(さか)るあをぞら神の見えざる手」神の見えざる手は、アダム・スミスの経済学の思想だが、あまり深読みの必要はないと思う。青空を飛ぶ鳥たちの姿を見て、生命活動…

中村汀女の「たんぽぽ」と「春の月」

詩歌アンソロジーを読むのは楽しい。俳句は短いから、次から次へと読めるんだな。大岡信の『折々のうた』シリーズも全部読みました、俳句だけですが。 今は出たばかりの長谷川櫂著『四季のうた―詩歌の花束』(中公新書)を読んでます。中村汀女の句「たんぽ…

高野素十の「おツかなさ」

青木亮人『その眼、俳人につき』(邑書林)を読み終える。新鮮な視点が、なかなか刺激的で面白い。高野素十を論じた「素焼きの「おツかなさ」」で、川端茅舎と中村草田男の対談が抜粋されており、中村草田男が、素十は「おツかない」句をつくると発言している…