2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「生き様」という言葉

雑誌『俳句』の4月号の予告を見ると、特集で「境涯俳句―俳句は生き様」とある。いつの間にか「生き様」という言葉が頻繁に使われるようになった。使用者は「生き様=生き方」の感覚なのだろうが、私はこの言葉が嫌いである。「生き様」の「様(ざま)」には…

句集『稲津』(35)菊満開

【句集『稲津』(35)】虫の音の突然止まる息とめる やかましいほどに鳴いていた虫の声が突然パタリと止まる。突然の中断に、虫の声を聞いていた自分の呼吸もリズムを崩し、息を止めてしまう。何か起きたのだろうか、詳細は判らない。 菊満開今日一日のつつ…

徒然舎

岐阜市の古本屋『徒然舎』のブログをみていたら、入荷棚の写真に東洋文庫『蕪村句集講義』全3巻を発見。前から探していたがなかなか目にすることが無かった。12時開店を待って訪問。店外の文庫棚をまずは物色。自分が処分した文庫本がまだ並んでいる。萩原朔…

句集『稲津』(34)五平餅

【句集『稲津』(34)】五平餅胡桃の甘き匂ひかな 五平餅は地元の郷土料理。串にさしたご飯にたれをつけて焼いたもの。たれは味噌ダレが多いが、胡桃を刷り味噌に混ぜると、甘く香ばしい匂いが漂い食欲をそそる。 瑠璃色の小さな吐息蛍草 蛍草はツユクサのこ…

名紳もキクチ眼鏡も

名紳から完全閉店を知らせるハガキが届く。名紳は、青山商事のような紳士服の地元チェーン店。近いので愛用していたが、閉店は残念至極。アパレル不況は深刻と思っていたら、今度はキクチ眼鏡から、瑞浪店閉店の報せ。キクチ眼鏡も地元チェーン店で愛用して…

句集『稲津』(33)運動会

【句集『稲津』(33)】白線の真直ぐに延び運動会 運動会のメインは走る競技。グランドに石灰でコースを白線で示される。50メートルや100メートルの距離を全力疾走する。足が遅かったので、運動会の主役にはなれなかった。 秒針の音を消したり虫の声 家の周…

『南風』令和3年3月号

結社誌『南風』3月号が届く。「南風」の場合、同人作品は自選の「雪月集」村上鞆彦主宰選の「風花集」に、会員作品は津川絵理子選者の「南風集」に掲載される。南風集の投句から「今月の二十句」が毎月選ばれるが、3句掲載であるのに自分の句が採られていて…

句集『稲津』(32)蝸牛

【句集『稲津』(32)】同窓会名前呼び捨て麦酒つぐ 同窓会で昔の友達にあえば、敬称などつけない、ストレートに名前だけの呼び捨てで会話がはずむ。利害関係のない付き合いができる学生時代の特権だろう。 蝸牛いま這ひだしたところなり カタツムリが、ゆっ…

吉田拓郎『こうき心』

久しぶりに吉田拓郎の『こうき心』を聴いた。懐かしい。拓郎のアジテーションが、若かりし頃の自分に潜在的な影響を与えていたのかと思う。大学生となり実家を出た。知らない世界へと一歩を踏み出して行った。 街を出てみよう 今住んでるこの街が 美しくみど…

句集『稲津』(31)青大将

【句集『稲津』(31)】 黒板に消し忘れあり大西日 黒板消しは当番の生徒が消すが、きれいに消されていないこともある。白いチョークの文字に、西日が当たっている。中途半端な気だるさとやり残した感覚。 青大将長きその身をもて余す 青大将は大きな蛇だが…

熊谷守一つけち記念館

本日、天皇誕生日。疲れ果てたので本日仕事はお休み。天気もいいし、一度行ってみたいと思っていた中津川市付知町の熊谷守一つけち記念館までドライブ。自宅から1時間余りで現地到着。熊谷守一は付知町の出身で、母の死を契機に30歳台に6年ほど東京から戻り…

句集『稲津』(30)八寸

【句集『稲津』(30)】八寸の小鮎涼しく置かれたり 懐石料理の八寸で出されたその料理は、小鮎が生きて泳いでいるかのように盛り付けられていた。料理人の技を見て楽しむのも料理の醍醐味。箸をつけるのがもったいない。 炎天下口を結びて男立つ 最近の夏は…

義仲寺

義仲寺は滋賀県大津市にある。木曽義仲のお墓があり、義仲を慕う芭蕉が埋葬を希望したため、弟子達の尽力で芭蕉のお墓が並んで立っている。 夜中に久保田万太郎の全句集を広げていたら、『流遇抄以後』に万太郎が義仲寺を訪れた時の俳句を発見。「はなはだ風…

句集『稲津』(29)南瓜畑

【句集『稲津』(29)】八月の十五日より戦なく 子供時代に北山修の『戦争を知らない子供たち』が大ヒットした。1945年8月15日に玉音放送が流れ莫大な犠牲を払った太平洋戦争が終結した。以来、日本に戦争が発生することは無かった。戦争を知らない子供たち…

給与振込待った無し

給与振込は3営業日前に銀行へデータを持ち込まなければならない。勤務先の給与は20日締めの月末支払い。今年の2月は、給与振込の準備期間がまるでない最悪の日程となった。27・28日が土日。天皇誕生日の23日が挟まり、給与データ送信の締切日は22日。いつも…

句集『稲津』(28)出口

【句集『稲津』(28)】短夜や出口へ急ぐ人のあり 非常灯の緑の表示を見ると、そこには出口へ急ぐ人がいる。妻子も親も残して、友は何を急いで去っていったのか。印刷会社に勤め、酒好きな楽しい奴だった。 蝉時雨すべての音を消してゆく 呼吸が途絶え心音が…

SLAM DUNK 31巻

いつも昼食を食べる喫茶店で、茶色に焼けきった『SLAM DUNK』31巻を見つける。31巻は最終巻で、山王工業戦。もう何度も読んだが、読み返すたびに胸が熱くなる。週刊少年ジャンプに連載中は、SLAM DUNKを読むために毎週発売日が待ち遠しかった。奥付を見ると1…

句集『稲津』(27)岩島博司

【句集『稲津』(27)】先を行く父が手を振る夏帽子 私の父は、子供に対して余りどうこう言わない寡黙な人だった。進学も就職も結婚も好きなようにさせてもらった。人生の先を歩いている父が、手を振って先導してくれたような気がする。 七夕の夜を静かに脈…

怒ったほうが健康的?

歳をとると怒りっぽくなると言われるが、本当にそうだ。別にいい人と言われ無くてもかまわない。怒りたい時には怒ればいい、それが自然だ。外山滋比古が『老いの整理学』で似たようなことを言っている。怒る、ということは、多少、ハタ迷惑であるが、禁止し…

句集『稲津』(26)宇治

【句集『稲津』(26)】鳳凰の眼涼しく見つめけり宇治市で開催されたJRさわやかウォーキングに妻と二人で参加する。平等院鳳凰堂で見た鳳凰の像は、千年以上人間界を見続けてきた。圧倒的な佇まいに心打たれた。 木下闇緑寄せ来る宇治の川 宇治を取りまく山…

『バンクシー展 天才か反逆者か』

2018年からモスクワ、サンクトペテルブルク、マドリード、リスボン、香港を巡回し、100万人以上の人々を動員した展覧会が日本にやってきた、しかも名古屋に。旧ボストン美術館で2月3日から5月30日までのロングラン。イギリスを拠点に活動する世界的な注目を…

句集『稲津』(25)夏蜜柑

【句集『稲津』(25)】夏祭白黒茶色丸坊主 お祭りの賑わいを、頭髪の色で表現しようとした。白髪の老人、黒髪の人、茶色に髪を染めている人、スキンヘッドの人。祭りに集う老若男女の様子を、全部漢字の俳句で作ってみた。 夏蜜柑一房ごとの酸味かな 夏ミカ…

酢キャベツ

酢キャベツは、ダイエットに効果があるらしい。バナナダイエットとか単品を食べるだけで痩せるのが難しいのは、頭ではわかっているが、手軽ゆえに手を出してみたくなる。キャベツには、水溶性と不溶性2種類の食物繊維がバランスよく含まれていて腸内環境を整…

句集『稲津』(24)水芭蕉

【句集『稲津』(24)】幸せを一つ買ひ足す扇かな買い物は人に幸福感を与える。自分の欲望を満たすことができた達成感、所有するという独占欲の充足感なのだろうか。扇子を買うことをうれしく思うのは、買い物の功徳なのだろう。 山彦の返す声なし水芭蕉 山…

無呼吸症候群とCPAP

無呼吸症候群である。CPAP療法のため月1回クリニックに通院している。CPAP(シーパップ)とは、機械で圧力をかけた空気を鼻から空気の通り道である気道に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法である。CPAPは、15~20cm位のCPAP機器本体と、…

句集『稲津』(23)姫女苑

【句集『稲津』(23)】夏暁や陽の射して来る刺しに来る 夏の朝。通勤電車で会社に向かっていると 車窓に朝の光が差し込む。すでに夏の太陽は光量も熱量も十分である。起きて間もない身体は覚醒しておらず、太陽光線に射撃され刺し貫かれる気分。 今日の日を…

五欲

人間は欲望の生き物である。しかし、50歳を過ぎたころから、身体的な衰えもあり欲望の大小が顕著になる。仏教の言葉に「五欲」というものがある。五種の欲望の意で、五官の欲望、悦楽のこと。目、耳、鼻、舌、身の五つの感覚器官「五根」が、それぞれ色、声…

句集『稲津』(22)扇風機

【句集『稲津』(22)】知らぬ人通りて行きぬ夕端居 家の前は道路。田舎道とはいえ、通行人はいる。ご近所の知った顔もあれば、どこの誰かわからない人も歩いてゆく。目の前を通過していく数多の人と時間。 扇風機首つかまれて出番なり 本句集を発表して、一…

ファミチキバーガー

ファミチキバーガーを初めて食べる。1月に発売されて、ずっと気になっていたが、なかなか食べる機会がなかった。既存のファミチキを、別売のバンズに挟んで食べる商品。バンズは山崎製パンの商品。中身とパンを別売して合体させる売り方が斬新。 味はファミ…

句集『稲津』(21)雨蛙

【句集『稲津』(21)】母の日や長生きするは父の分 父は62歳で交通事故で突然に亡くなった。母は二人で営んできた製陶工場を閉鎖し、畑仕事をしながら実家で一人暮らしを四半世紀以上続けた。父親の分も長生きしてほしいと思う。 雨蛙汝小さく青かりし どこ…