2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

結社歳時記

『俳句』4月号の「結社歳時記」にわたしの所属する「南風」が掲載されている。村上鞆彦主宰以下35名の俳句が並んでいる。私は投句するだけで会合には出ないので、主宰をはじめとして誰にも面識はないのだが、会誌で名前も俳句も毎月見ているので親しみを感じ…

句集『稲津』(66)姫路城

【句集『稲津』(66)】姫路城羽根をひろげし寒鴉 社員旅行で姫路城を見学した。改修工事の終了後で、城は美しい姿を見せていた。姫路城は別名「白鷺城」と呼ばれるが、城内の鴉が俺もいるぞと自己主張していた。 秋霞白き未来の中へ入る 雨が上がった翌日、…

津野海太郎

『本の雑誌』を買ったのは、特集が津野海太郎だったから。津野海太郎と言えば、黒テント、晶文社、本とコンピューター。今や80歳を越えた高齢者なのか。津野海太郎がいなかったら、日本のサブカルチャーはこんなに盛んになっていなかっただろう。黒テントの…

句集『稲津』(65)銀漢

【句集『稲津』(65)】南天の実の赤々とこぼれけり 大きな南天の木に実がびっしりとつき、天然のデコレーション・ツリーとなって、赤色がこぼれ落ちるようだ。蕭条とした冬の景色の中で、南天の赤は際立つ。 銀漢の下に人生散らばれり 満天の星空の下、星の…

西村賢太は飲み過ぎだ

久しぶりに『本の雑誌』を購入。今や絶滅危惧種である最後の私小説作家、西村賢太が日記『一私小説書きの日乗』を連載していて読んでしまう。人の生活を覗きみる楽しみが日記を読ませるのだろう。西村賢太も書いて食べて寝るの繰り返し。気になったのはその…

句集『稲津』(64)金木犀

【句集『稲津』(64)】金木犀香りの下を研修生 京都で外部研修を受けたことがある。その時場所の移動があって、金木犀の垣根の下を歩いて行った。金木犀の香りがしたのを 思い出す。 荒き声あげる人あり冬隣 携帯電話で通話しながら、大きな声で怒っている…

3位の羽生結弦

フィギュアスケートの世界選手権で、羽生結弦がまさかの3位だった。羽生結弦は素人目にも本来の滑りができておらず、7本中4本のジャンプでミスをして、フリーは4位の182・20点で、自己ベストを30・79点下回った。ミス無く滑ることの難しさを思い…

句集『稲津』(63)秋刀魚

【句集『稲津』(63)】少しだけでんでん虫の進みたる かたつむりが移動している。人間から見るとその移動距離は、ほんのわずかなものかもしれないが、かたつむり自身にはすごい距離なのかもしれない。 一心に食べる人なり焼秋刀魚 秋の味覚の代表は秋刀魚。…

訃報

携帯に、地元在住の小中学校の同窓生の母の訃報が届く。今月の初めに父親が亡くなったばかり。ご主人の後を追いかけるように亡くなられた。桜が咲く春爛漫のなか天に昇っていく御霊がある。 合掌。 何処までも同行二人山桜

句集『稲津』(62)葉鶏頭

【句集『稲津』(62)】音信を断ちし人あり葉鶏頭 かつて一緒に遊んだ友達も今は何処で何をしているのか分からない人がいる。音信を断つたのは相応の理由があるのだろう。『俳句αアルファ』津川絵里子選者、佳作入選。 道野辺に白き芒の揺れやまず 道端に白…

第44回南風メール句会

第44回南風メール句会の結果が配信される。 今回は74名参加、222句の投句。特選1名、並選に2名選という結果。特選で選評を書いてもらえるとやっぱり嬉しい。 指切りをした頃のこと花菫 小さな菫の花に、指切りしている幼児の頃の自分を重ねて。追憶の句を作…

句集『稲津』(61)帰省

【句集『稲津』(61)】それぞれに犬抱き上げて帰省の子 お盆休みで帰省した三人の子供達が、家に着くとまず最初にするのが愛犬への挨拶。抱き上げ方も三者三様だが、犬も子も久しぶりに会う喜びがあふれる。 昼寝する子の大の字が崩れけり 自宅は最大のくつ…

ゴルトベルク変奏曲

ゴルトベルク変奏曲は、バッハによる2段の手鍵盤のチェンバロのための変奏曲 。 バッハが音楽を手ほどきしたゴルトベルクが不眠症に悩むカイザーリンク伯爵のためにこの曲を演奏したという逸話から「ゴルトベルク変奏曲」と呼ばれている。グレン・グールドの…

句集『稲津』(60)燕

【句集『稲津』(60)】休憩の人すり抜けて巣に燕 休憩所で思い思いに休んでいる人たちの頭上をすり抜けるように、燕がせわしげに巣に飛んでゆく。巣作りなのか、餌を運んでいるのか、行ったり来たり。人間も燕も生きるのに一所懸命。 夏の風空巣が一つ残り…

宇佐見りん『かか』

ジュンク堂に宇佐見りんの『かか』『推し、燃ゆ』の2冊が平積みされていて足が止まった。『かか』が三島由紀夫賞、文藝賞を受賞、『推し、燃ゆ』は芥川賞を受賞、帯には21歳とある。どんな作品なのだろうと、久しぶりに小説を買い読み出す。とりあえず『かか…

句集『稲津』(59)入道雲

【句集『稲津』(59)】百日紅愉しき時は短くて 百日紅を庭木として植えている家が多い。百日紅の開花期間は普通の花に比べれば長いのだが、楽しんでいる時間はあっと言う間に過ぎてしまう。永遠の時間は無い。 入道雲光の中に立ち上がる 夏の空に入道雲が湧…

市駅

通勤にJR中央線を利用している。瑞浪から乗車して次の駅は土岐市駅。なぜ土岐市駅には「市」がつくのか子供の頃から疑問を抱いていたが解明できないままだった。 ウィキペディアで調べてみると以下の説明。日本の鉄道駅において、同じ市内にある同じ名前の別…

句集『稲津』(58)夜の底

【句集『稲津』(58)】夜の底へ線香花火が落ちる 六八三の変速的な切れ方の俳句。線香花火の火の玉が落ちそうで落ちない感じを1音引っ張ることにより表現。最後は落ちると言い切り、夜の底の深さを示唆した。 小さきは小さきなりに青蛙 実家の石垣に貼り付…

金屋のサンドイッチ

ユニモール出入り口の催事スペースでサンドイッチを販売していた。エビカツサンドが1000円、残り1個これが最後ですと勧められ、極厚タマゴサンドとどちらにしようか迷ったが、エビカツサンドを購入。販売していたのは、中区錦3丁目に店がある玉子サンドイッ…

句集『稲津』(57)積乱雲

【句集『稲津』(57)】蝉鳴くや光の中へ這ひ出たる 長い間真っ暗な地中にいた蝉が、地上に出て初めて太陽の光を浴びた時の気持ちは、どんなものなのかと想像してしまう。歓喜と解放、だからこそ蝉は命の限りを鳴く。 積乱雲戻ることなき道後ろ 高村光太郎に…

初音

今日は朝から雨模様で憂鬱な日となりそうだが、昨日の朝は暖かく林から鳥たちの囀りが賑わしい程であった。鶯の「ホーホケキョ」の鳴き声を今年初めて聞いた。春告鳥の鶯の声を聞けば春本番。庭の水仙は咲き出したし、来週は桜が開花時期を迎える。楽しみな…

句集『稲津』(56)紙飛行機

【句集『稲津』(56)】わが前に少年立てり大西日 年齢は重ねたが、精神的な成熟の実感はなく、小学生の頃の自分が目の前にいる。夕焼けに照らされて立っている私の感想。 夏空へ紙飛行機は音もなく 紙飛行機を夏の空へ向かってとばす。エンジン音もプロペラ…

からすみ

地元産品の販売所「きなあた瑞浪」で、からすみセットを買った。私の地元でからすみと言えば、珍味であるボラの卵巣のくんせいではなく、米粉に砂糖や黒糖、よもぎ、くるみなどを練りこんで蒸したお菓子をいう。岐阜県東濃地域では、桃の節句のお供えや日常…

句集『稲津』(55)薄暑光

【句集『稲津』(55)】洗車する水の滴り薄暑光 ホースで水をかけて車を洗う。流れる水が車体からポトポトと滴り落ちていく。丁寧に磨きあげた車に太陽の光が反射してまぶしい。洗車完了、ちょっとした充実感。 夏木立うたごえ風の又三郎 宮沢賢治の『風の又…

リモート面会

久しぶりに、老健施設でお世話になっている母に会いに行く。新型コロナの感染対策で、面会はZoomでのリモート方式。耳が遠いので、ボードを使った筆談である。機器使用するので面会は平日限定の時間指定で完全予約制。画面を通じてしか会えないが、現状では…

句集『稲津』(54)糸とんぼ

【句集『稲津』(54)】緑蔭に自転車の列続きけり 道に出来た木陰を自転車が何台も通り過ぎて行く。サイクリングを楽しむグループの列が出来ている。自転車のペダルを踏んで風を受け走るのが気持ち好い季節の到来である。 耳遠き母の近くへ糸とんぼ 母はすっ…

駅ピアノ

帰宅時、金山駅のコンコースに人だかりとピアノの音。何かしらと覗くとグランドピアノが置かれ演奏している。You Tubeやマンガで見たことはあるが、実際に見たのは初めての体験。この駅ピアノは期間限定で、演奏時間も限定され一人5分間。立ち見の人もすごか…

句集『稲津』(53)鯉のぼり

【句集『稲津』(53)】鯉のぼり風につかまれ跳ね上がり 吊された鯉のぼりが風を受けて泳いでいる。強い風になるほど鯉のぼりの動きも大きくなるが、跳ね上がるように見えることも。長野県阿智村で鯉のぼりを見て作句。 夏来る小鳥のとばす水しぶき 水を呑み…

コロナの短歌

しばらくは離れて暮らす「コ」と「ロ」と「ナ」次逢ふ時は「君」といふ字に すでに有名なのかも知れないが、タナカサダユキという人がフェイスブックに投稿した一首。君の文字を分解するとコロナになるという文字の遊びでコロナ感染の世相を切り取った短歌で…

句集『稲津』(52)囀り

【句集『稲津』(52)】一斉に名乗りをあげて囀れり みんなが一斉に名前を告げているのだろうか。林から聞こえてくる囀りのやかましいこと。鳥たちも求愛行動に必死なのだ。賑やかに生命が踊る季節。 囀りに鴉も低く鳴きにけり 林から聞こえる囀りに反応した…