2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

虚子探訪(218)慈善鍋

【虚子探訪(218)】 「来る人に我は行く人慈善鍋」 昭和8年11月27日。丸之内倶楽部俳句会。 慈善鍋はキリスト教の救世軍が行う年末の街頭募金。募金活動をする人の前を往来する人々の光景。 「雑炊に非力ながらも笑ひけり」 昭和8年12月8日。草樹会。丸ビル集…

虚子探訪(217) 日短

【虚子探訪(217)】 「物指で背(せな)かくことも日短」 物指で背中をかくこと、ありますねえ。日短の季語と取り合わせ一句。 「来るとはや帰り支度(じたく)や日短」 昭和8年11月19日。発行所例会。丸ビル集会室。 来たと思ったら、もう帰りのことを算段して…

虚子探訪(216) 菊の宿

【虚子探訪(216)】 「秋の蝶黄色が白にさめけらし」 昭和8年10月23日。玉藻句会。丸ビル集会室。 はかなげな秋の蝶、その白色はもともと黄色だったのが色褪せたのかと思える。「けらし」は原形「ける+らし」であり過去を推定する意味であり、俳句で使われる…

虚子探訪(215) 夜長

【虚子探訪(215)】 「加藤洲の大百姓の夜長かな」 昭和8年10月1日。武蔵野探勝会。常陸鹿島神社行。 鹿島神社の帰路、加藤洲を通った時に詠まれた句。水郷地帯特有の風景が続くなか、大百姓の家もあるが、他の百姓と同じく秋の夜長に静かに溶け込んでいく。 …

虚子探訪(214) 夜学

【虚子探訪(214)】 「燈台は低く霧笛は峙(そばだ)てり」 昭和8年8月23日。釧路港。此夜、釧路港、近江屋泊。 釧路燈台とその横に立つ霧笛を詠む。海霧の濃い北の海。むせびなくような霧笛の鳴る音。 「一筋の煙草のけむり夜学かな」 昭和8年9月29日。草樹会…

虚子探訪(213) 湖畔村

【虚子探訪(213)】 「 バス来るや虹の立ちたる湖畔村」 北海道旅行1週間目。阿寒湖畔の弟子屈(てしかが)という村。 「火の山の麓の湖に舟遊(ふなあそび)」 昭和8年8月22日。阿寒湖。此夜、弟子屈、青木旅館泊。 阿寒湖では、船に乗って遊んだのであろう。旅…

虚子探訪(212) 北見富士

【虚子探訪(212)】 「船涼し己が煙に包まれて」 昭和8年。8月16日発、北海道行。あふひ、立子、友次郎、草田男、夢香、桜坡子、木国同行。8月17日、青函連絡船松前丸船中。 青森から函館へ向かう青函連絡船での句作。蒸気船の煙は、向かい風に靡いて船体に沿…

虚子探訪(211)風鈴

【虚子探訪(211)】 「浴衣着て少女の乳房高からず」 昭和8年7月12日。おほさき会。発行所。 浴衣姿の幼い少女の胸はまだ小さい。彼女の成長はまだこれからなのである。 「風鈴の音に住ひをる女かな」 昭和8年7月24日。玉藻句会。丸ビル集会室。 風鈴の音がす…

虚子探訪(210) 広野

【虚子探訪(210)】 「虹立ちて雨逃げて行く広野かな」 昭和8年5月25日。丸之内倶楽部俳句会。 広い野原に激しく雨が降っていたが、やがてそれも遠のき、日が差してきて美しい虹がかかった。 「雨逃げて行く」と擬人化して詠む。虚子は「虹」を詠むのが好きで…

虚子探訪(209)子の日

【虚子探訪(209)】 「鶯や御幸の興もゆるめけん」 昭和8年4月12日。中辺路を経て田辺に至る。中辺路懐古。 鶯の鳴く声に、後鳥羽上皇をはじめとする熊野詣の御幸の一行も、しばし興をゆるめて鶯の声に耳を傾けたことだろうという句意。 「子(ね)の日する昔の…

虚子探訪(208) 那智の滝

【虚子探訪(208)】 「神にませばまこと美(うる)はし那智の滝」 那智の滝をどのように俳句表現するかは、対象のスケールの大きさもあり、難しい課題である。虚子は、滝=神と断定することにより、荘厳かつ真実の美と滝を詠んだ。こういう把握は、虚子ならでは…

虚子探訪(207) 春の泥

【虚子探訪(207)】 「鴨の嘴(はし)よりたらたらと春の泥」 昭和8年3月3日。家庭俳句会。横浜、三渓園。 この句の眼目は「たらたら」という表現につきる。鴨の嘴から何か垂れている、それを見つけた虚子のなまなましい表現が、春の水を浴びる鴨の姿を髣髴とさ…

虚子探訪(206) 小笹原

【虚子探訪(206)】 「雪解くるささやき滋(しげ)し小笹原(おざさはら)」 昭和8年1月27日。鎌倉俳句会。 小笹の原っぱが続く。雪が解けて雫の音がやまない。その音が春を感じさせ滋味豊かな響きだというのである。 「紅梅の莟(つぼみ)は固し言(ものい)はず」 …

虚子探訪(205) 凍蝶

【虚子探訪(205)】 「つづけさまに嚏 (くさめ)して威儀くづれけり」 昭和8年1月21日。家庭俳句会。 連続放屁、面目ない。ははは。 「凍蝶(いてちょう)の己が魂追うて飛ぶ」 昭和8年1月26日。丸之内倶楽部俳句会。 虚子自解では、「其凍蝶の飛ぶときの様子は…

虚子探訪(204) 狐の顔

【虚子探訪(204)】 「つく羽子(ばね)の静に高し誰やらん」 昭和8年1月9日。笹鳴会。丸ビル集会室。 羽子板の羽が静かに高く空中に舞い上がった、突いているのは誰だろう。 「襟巻の狐の顔は別に在り」 昭和8年1月12日。七宝会。松韻社にて。日比谷公園。 冬…

虚子探訪(203) 木の実

【虚子探訪(203)】 「大小の木の実を人にたとへたり」 昭和7年11月14日。笹鳴会。丸ビル集会室。 そのままに読めばよいのかな。それがどうしたと突っ込みを入れたくなる。 「描初(かきぞめ)の壺に仲秋の句を題す」 昭和8年1月1日。鎌倉宅病臥。皿井旭川来、…

虚子探訪(202) 夜霧

【虚子探訪(202)】 「山間の霧の小村に人と成る」 この句は、虚子の最古参の弟子、西山泊雲を詠んだ句。泊雲は丹波竹田の出身。 「顔よせて人話し居る夜霧かな」 昭和7年10月20日。木 会。大阪倶楽部。 夜霧が濃いので顔を寄せて、人々が話しをしている。霧…

虚子探訪(201) 遅月

【虚子探訪(201)】 「秋風の急に寒しや分の茶屋」 昭和7年10月9日。松江を発ち大山に向ふ。大山登山。 大山の登山中、急に温度が下がり寒さを感じたのである。茶屋で休憩。 「遅月の上りて暇申しけり」 昭和7年10月19日。嵯峨野吟行。二条、巨陶居。 遅月が…

虚子探訪(200) 夜学

【虚子探訪(200)】 「夜学すすむ教師の声の低きまま」 昭和7年9月10日。「山茶花」十周年記念大会兼題。 夜学校の授業が、教師の低い声が教室に響き静かに進んでいく様子。 「くはれもす八雲旧居の秋の蚊に」 昭和7年10月8日。出雲松江。八雲旧居を訪ふ。 ラ…

虚子探訪(199)榛名湖

【虚子探訪(199)】 「榛名湖のふちのあやめに床几かな」 昭和7年7月31日。伊香保に遊び、榛名湖にいたる。 榛名湖の湖岸に咲くアヤメを、床几に座って見学したのだろう。榛名湖の寄せ来る波とそよ風。 「落花のむ鯉はしやれもの髭長し」 昭和7年9月4日。武蔵…

虚子探訪(198) 釣忍

【虚子探訪(198)】 「夏草に黄色き魚を釣り上げし」 昭和7年6月5日。武蔵野探勝会。石神井、三宝寺池。 池の周りには夏草が生茂りそこで釣りをしている人がいる。釣り上げられたの羽一匹の鮒。黄色の腹をみせ草の上に飛び跳ねる。 「自ら其頃となる釣忍」 昭…

虚子探訪(197) 燕

【虚子探訪(197)】 「燕のゆるく飛び居る何の意ぞ」 昭和7年5月7日。水竹居祝賀会。四ツ木吉野園。 いつもはせわし気に飛び交う燕が、今日はゆっくりと飛んでいる。どうしたんだろうねえと不思議に思う気持ちをそのまま句に。 「春の浜大いなる輪が画いてあ…

虚子探訪(196) 聾青畝

【虚子探訪(196)】 「結縁は疑もなき花盛り」 「結縁」は、仏道にはいりやがて往生することができるきっかけを得ること。まちがいなく大往生できる、それほどに素晴らしい満開の桜。 「聾青畝ひとり離れて花下に笑む」 昭和7年4月19日。木 会。大阪倶楽部。 …

虚子探訪(195) 長閑

【虚子探訪(195)】 「花の雨降りこめられて謡かな」 昭和7年4月12日。京都石田旅館にあり。安倍、和辻両君来り、謡二番。 雨天につき安倍能成、和辻哲郎と謡曲、豪華なキャストである。 「山寺の古文書も無く長閑なり」 昭和7年4月16日。蜻蛉会。西山十輪寺…

虚子探訪(194) 草を焼く

【虚子探訪(194)】 「ぱつと火になりたる蜘蛛や草を焼く」 蜘蛛が燃え一瞬の炎を上げた。草を焼く風景の一コマ。 「我心漸く楽し草を焼く」 昭和7年3月24日。丸之内倶楽部俳句会。 だんだんと気分が盛り上がり楽しくなってきたぞ。ただいま草を焼く途中です。

虚子探訪(193) 猫の恋

【虚子探訪(193)】 「風の日の麦踏遂にをらずなりぬ」 昭和7年2月13日。荻窪、女子大学句会。 風が強い日なので、麦踏みをしていた人も、とうとう誰もいなくなってしまった。 「学僧に梅の月あり猫の恋」 昭和7年2月22日。薺会句会。 修業中の僧侶に梅の木か…

虚子探訪(192) 春の水

【虚子探訪(192)】 「春の水流れ流れて又ここに」 昭和7年2月7日。武蔵野探勝会。砧村大字岡本字下山、岩崎別邸。 春の水が流れて、再びその水の流れているところに出会ったよという発見。あまり面白い句とも思えない。 「草萌や大地総じてものものし」 昭和…

虚子探訪(191) 古言海

【虚子探訪(191)】 「炭斗(すみとり)は所定まず座右にあり」 昭和6年12月14日。笹鳴会。丸ビル集会室。 「炭斗(すみとり)」は、木炭を小出しにしていれておく箱。なんやこれの句ですね。寒いから炭が要るのはわかりますが。 「水仙や表紙とれたる古言海」 昭…

虚子探訪(190) 羽抜鳥

【虚子探訪(190)】 「羽抜鳥身を細うしてかけりけり」 昭和6年12月2日。羽の抜けた鶏が、何かに驚き本能的に身を細く引き締め駆けていった。哀れな羽抜鳥。 「鷹の目の佇む人に向はざる」 昭和6年12月11日。東大俳句会。丸ビル集会室。 虚子がどこの鷹の様子…

虚子探訪(189) 藤の落葉

【虚子探訪(189)】 「たらたらと藤の落葉の続くなり」 昭和6年11月15日。二子多摩川吟行。柳家休憩。 藤の落葉がずっーと続いている。切れ目なく続く光景を「たらたら」と表現。 「寺の傘茶店にありし時雨かな」 昭和6年11月19日。丸之内倶楽部俳句会。 時雨…